(社)北海道建築士会 青年委員会「法改正に関する取組」まとめ
1,確認申請に関して
① 中規模物件の緩和について
構造設計一級建築士が構造計算する31m未満、5,000㎡未満の建築物の構造計算適合判定を必要としないなどの緩和措置を要望します。
② 4号特例について
建築士の資格を必要としない建築物に対し、建築士以外の設計及び工事監理を禁止し、すべての建築物が建築士の設計によることとし、位置、面積、高さ等、基本的な部分の確認など申請業務の簡略化をはかります。また、防火、構造部分はすべて建築士の責任とします。22条地域、準防火、防火地域内の建築物の外壁、屋根改修時及び、内装制限のある建物の内部仕上の改修時、あわせて用途変更の場合も建築士による設計の義務化と業務としての責務を建築士へ持たせるような仕組みを要望します。
③ 確認申請期間について
確認申請を受付けてから確認がおりるまでの期間が長期化しています。
(確認の実質日数は落ち着いてきているが、事前の打合せなどの相談や、判断の答
案待ちで、全体的な時間が長くかかる傾向にある状況です。)
④ 内部審査の流れの見直しや、中・小規模物件の適判の緩和に期待します。
⑤ 確認申請業務を建築士にもっとまかせてほしい。
管理建築士・建築士に責任をもたせ、確認申請業務の簡略化を提言します。
⑥ 住宅の改修等にも建築士として責任を持たせてもらうべき。(新制度の創設)
⑦ 特建以外の4号物件に限り、単体規定については建築士の責任により申請内容対象
外、集団規定のみ申請内容の対象とすることを要望します。(トラブル時における
建築士の責任は重大になりますが…)
2,既存建築物に関して
以下のような意見がありましたので改善を要望します。
① 一部増築工事を行う計画があったが、既存の建物の構造判定が必要になり、施主
の希望通りの増築が出来なかった。
② 歴史のある建物を有効に利用したいと思うが法の規制で出来ない事が多くある。
③ 古い住宅の改修が困難になってきている。
・ 既存不適格の扱いが、北海道は緩和されていたが、全国ルールになると厳しく
なったのではないかと思います。図面が無いものも多く、取り壊して調査しないと
いけない場合がある。
・ 確認申請書類や、設計図書の有無が業務量に多大な影響を及ぼす。
・ 売買時に図面の復元が必要なケースもある。
・ 構造偽装以来、中古物件を銀行融資で購入する際にも、検査済証を要求される
ようになり、特に商業施設は仮使用許可のまま使われている場合が多く、今の基準
法では確認申請証ないし当時の図面がなければ行政側(検査機関)も検査済証の発行は不可能で、そのような事態になると行政側も検査を行う旨の通知を建物所有者に出せなくなり、見て見ぬふりをするしかなくなっている。
・ 建築物は財産であり、歴史的建造物は文化財として価値もある。そのようなもの
をストックリユースする際に建築基準法がネックになっている。これは日本経済にも悪い影響を与えていると思う。
・ 司法でも裁判員制度が始まり、一般の人達にも法律・裁判について感心を得られるようになったと思う。建築基準法も一般の人達にもある程度理解してもらえるような制度が必要になっていると感じる。
・ 弁護士は、法を犯してしまった人を養護し、報酬を得ます。その人の不利益を少しでも軽減しようとするのが仕事ですが、建築士は施主に対し不利益、理不尽なことを法律だからと言って理解をしてもらい、時には指導して報酬を得なければなりません。(本来、設計により財産を生み価値を高めるもの)
・ 通常の確認申請の簡素化、それに伴う建築士の厳罰化は、なされたとしても、既存建築物についてと、地域性については裁判員制度的なもの(行政・審査機関・建築士・有識者・市民)で判断できるようにするべきだと思う。
④ 耐震診断・改修について
道東や太平洋側地域などの地震の頻発する方面では、購入者の建物に対する耐震性への関心が強いが、旭川以北の道北などの地域では殆ど地震が発生せず、ユーザーの関心も薄い。
3,業務報酬に関して
① 平成21年1月7日(国土交通省告示第十五号)に依り業務報酬が改正され、同日、国住宅住指第3932号(国土交通省住宅局長)より、業務報酬の合理的かつ適正な算定に資するよう、貴管内の建築士事務所、発注者等に対して、関係団体を通ずる等によって周知徹底を図るよう旨が通知され、重要事項の説明や書面の交付による契約内容の明確化(設計・監理料の明示)に伴って、ある程度理解が得られるようになりましたが、いまだ適正な業務報酬を得られていないのが現状です。
建築士会としてもよりいっそう周知するよう努める所存ですが、国土交通省様からも関係団体・一般消費者に対して、解かり易いよりいっそうの理解が得られるような公示を今一度していただきたいところです。
② 住宅の改修等にも建築士が関わらなければ工事ができない法改正や制度改正の創設、設計料に対する融資制度の創設を要望致します。前記の法整備により建築物・建築士の質の向上に寄与し、しいては適正な業務報酬につながることと思われます。
③ 業務報酬基準改正後、一部行政庁では旧法の業務報酬算定基準で算定し発注している機関がいまだ在ると伺っております。様々な事情があることと思いますが、関係機関に法令遵守の周知の徹底を要望します。
4,採光・換気に関して
① シックハウスについて
シックハウス対策における24時間換気において、居室容積の気積を1時間で0.5回換気する事と定められているが、指定換気回数0.5回という数値基準の根拠が明確に公表されていないと思われます。設定根拠が不明のまま、ユーザーに説明を説いても、説得力に欠け、誤った解釈をされてしまい不都合な計画になる恐れが考えられます。よって設定根拠を明確にし、個々の建物において設ける設備をより有効的に働かせることが必要だと考えます。更には、個々の建物において想定される家具、暖房器具等の配置による有効な提案が認められた場合においては、細かい数値基準に弾力性を持たせた換気回数を定めるべきだと要望します。
② 居室の採光・換気について
採光において必要な政令で定める基準が解釈しづらいと思います。
ユーザーによっては採光が必要でない場合もあります。使用目的、環境衛生を考慮した場合における基準整備も必要だと提案します。弊害として、現実には居室として利用計画ではあるが、確認申請上、居室ではない室名の計画として申請することを誘発させている場合も考えられます。(基準数値に縛られない弾力的な基準・審査を考えて頂きたい)
換気において、シックハウス対策における換気と居室換気との整合性を持たせる
ことが必要だと思います。
5,法12条 定期報告に関して
「定期報告」を知らない建物オーナーが多く,特に建築設備に関しては,非常用照明など壊れたままで建物を使用しています。 また,定期検査をおこない,建築物に不備や,要是正の指摘があっても,オーナー側の意識が低く改善するケースが少なく感じます。
これは,建物が火災などの非常事態となったとき,なかにいる人の命に関わることであるため,新しい建築物より防災上もっと重要視し,定期報告又非常用照明の補修などを行わない,建物の使用禁止などの法的罰則と各種保険などに加入できない制限を設けることや、「定期報告制度」のPRを強化することを提言します。
6,建築士受験資格に関して
法改正後の建築士受験資格に実務経験・学歴の要件が限定されたことへの疑問を感じます。設計・工事監理に必要な知識・能力を得られる実務に限定したことは理解できますが、建築工事に関わる資格取得意識の高い者への配慮も必要だと思います。
素人が資格を持つことを規制するのではなく、免許の更新などで実際の実務者を把握することが重要だと考えます。さらに実務設計者だけが責任を取るシステムではなく、施工者・行政・発注機関の担当やコンサルティング・営業職の技術者も責任を取るシステムにしなくてはならない。よってまず資格が必要だと認識する制度づくりを要望します。
7,住宅瑕疵担保履行法に関して
以下のような意見がありましたので改善を要望します。
① 住宅瑕疵担保履行法について
・ 現状の基準・検査確認だけでは充分な確認が出来ないと思う。
・ 住宅引き渡し後に増改修した場合、保険が適用されない場合があり、消費者
保護の観点から適切とは言えないと思う。
・ 地盤調査を義務づけながら、地盤の影響による瑕疵には保険適用がされない
ことに疑問を感じる。
② 住宅瑕疵担保履行法の改善点・問題点
・ 瑕疵対象の拡張(住居以外の適用)、地盤の影響による瑕疵への補償、工事期間も含んだ制度が必要ではないかと思う。
・ 10年(保証期間)を過ぎた時に保険適用がなかった場合、多少の保険金返還がないのはおかしいと思う。
・ 検査が必要になるので工期的にも時間が必要になる。現場での作業は天候等の影響で流動的であり、検査に事前予約が必要になるので常にタイトになる。また順調に工程が進んだ場合、手待ちになってしまう。
・ 審査基準が保険会社によって違うことがあり混乱している。また検査員によっても指摘基準の違いがあり、検査員のレベル・経験不足を感じることもある。
・ 保険金額が高額過ぎる。建設コストへの影響が大きい。
・ 保険に加入するか否かの選択を施主に与えるべき。一律強制はおかしいと思う。
・ 実質的には保険という名の共済制度だと思う。無駄な検査を行わず掛け金だけを集めるのであれば、無駄な検査や手続きも省けコストも安くなると思う。
8,カーポート・車庫に関して
カーポート・車庫等についての提言
・ カーポートや車庫の設置に関する法や条例上の緩和を要望します。
・ 地域性に合った法や条例の見直し(建蔽率・構造・防火に関する全般)を求めます。
・ 同時に違法設置業者の根絶のため、必ず建築士が設置に関与するよう義務を求めます。
意見を呈する概要
北海道では住宅建築という行為の中で、除雪労力の軽減や車の保護を目的として、新築計画時・新築後・既存増改築の時節を問わず、建て主から『車庫』や『カーポート』の設置をしたいという要望を受ける事が多くあります。ここでの問題は、建築確認申請を提出し、完了検査を受けた物件ではなく、その後に無申請で建築されたケースの物件です。なぜ無申請かというと、多くの場合、現状の関係法規制下では、“建て主が満足のいくような建築が出来ないということ”だからです。
この関係法規制の違反は次のようなものであると考えます。
①無申請による建築確認申請義務に違反 ②建築基準法の建蔽率に違反
③外壁の後退距離規定に違反 ④防火上・構造上の法令に違反
⑤民法の隣地境界線からの外壁後退距離に違反
・ 車庫・カーポートなど簡易な建物を取り巻く法律の規制が厳しすぎると感じます。
カーポートの様な軽微な物は、適切な施工が行われれば、重大な事故に繋がる危険性が低い為、確認申請上の緩和を要望します。建蔽率、防火上(内装制限等)、構造規定等。
また、無資格、無申請のカーポートが販売されているのが現状であり、建築士が関与するしないにかかわらず同じ規制を受けるべきではないでしょうか。
・ 法令の緩和、条例での緩和、地域特性を重視する実情に合わせた法令を要望しますが、条例により法律を緩和する事は望めないので、今の条例対応では無理だと思われます。
・ カーポートのみならず、別棟物置にも建築基準法上の緩和規定を作るべきだと思います。
・ 景観を配慮することも必要だが、カーポート自体が景観を著しく損ねているとは、考えにくいと思われます。
・ 違法建築としての認識が低いと思われます。(特に建築士が設計・施工をしない大型量販店のような設置業者)
・ 違法カーポート車庫の行政命令での撤去は難しいのではないかと思うので、既存不適格とし、現状を認めた上で、新たな違法を生まないよう法整備していただきたい。場合によっては、建築士免許の剥奪の憂き目を見る建築士が出る危険性があると思います。
9,建築士として
① 建築士として信用を得るために提言します。
今回の法改正が、直接的に、ユーザーにむけての信頼の回復・向上に向かったと感じられず、結果、ユーザーにたいして、よりよいものが提出出来る環境になったようには感じられません。信頼向上を図り、建築士がある程度のことを社会から任されることが必要と考えます。また、設計者(提出側)と審査側のレベルの向上も必要と考えます。罰則をきびしくすると共に、モラル向上に努めます。
さらに、業界を取り巻く環境について、規制・基準を厳しくする傾向に感じられますが、その影響は、ユーザーに対しても負担が大きくなっているように感じられます。
共によい建物を目指して頂く風潮づくりが必要と感じ、ユーザー側にも、情報を発信し、知識の向上を図ります。
提案として、建築士は資格の更新を必須にし、定期講習は全ての資格者に義務付ける
べきです。さらには、建築物の施工や確認又は発注機関の監理者側の無資格業務を
排除することを明確に法律で定めるべきと提案します。